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残業代の新しい考え方

残業代の月による変動を見込みたい

残業代の月による変動を見込みたい 「見込み残業を想定した固定残業手当の支給」は、ある一定量の残業が毎月見込まれる会社についての話でした。一方で、残業時間が毎月まちまちの会社もあります。これに、固定残業手当制度は使えるのか、という疑問があります。たとえば、こういう例がありました。

B社では、毎月ある程度の時間外労働が見込まれることから、毎月40時間の想定残業を設定している。
賃金の中身は、基本給○円、想定残業代△円となっている。9月の時間外労働は30時間であったが、想定残業40時間分の賃金は減額せずに支払った。
10月の時間外労働は45時間であり想定残業時間を5時間程上回ったが、前月に10時間分多く払っているため、差額払いは不要と考え清算を行わなかった。
これまでも同様のケースはあったが、同じように対応している。

しかし、あるとき労働者から、残業代の未払いが発生しており違法ではないかとの指摘を受けた。毎月一定時間分の残業代をあらかじめ設定して支払う固定残業制度は、会社によって制度の運用方法はさまざまなので、解釈や性格については、就業規則や賃金規程でどのように定めているかが重要です。

固定残業制度を取り入れた場合でも、実際の時間外労働が想定残業時間と違った場合、実際の残業時間のほうが多ければ労働者はその差額を請求することができ、実際の残業時間が少なければ会社は労働者にその差額を返還するよう請求することができます。
 

残業時間に変動がある会社でも固定残業制度を適用できる!

残業代の月による変動を見込みたい しかし、B社のケースは、会社が差額の返還をあえて請求せず、「当月残業代30時間+翌月の残業代10時間分の前払い」という形をとっているにすぎません。「え? そんな考え方ができるんですか?」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。しかし、賃金の「前払い」を規制する法律や通達はどこにも存在しないのです。したがって、「前払い」という考え方を否定することはできません。労働者としても、残業が少なかったからと収入が変動することは生活の安定を欠くこととなり、好ましいものではないでしょう。また、会社も煩雑な返還処理を行わず、翌月分の「前払い」として支給することは運用面からみてもメリットがあります。

そこで私は、残業時間に変動がある会社においても、固定残業制度を導入し、さらに「残業代の繰り越し精算」という新しい考え方を導入することを提案しています。
 

具体的な運用の一例

具体的な運用の一例 毎月40時間の残業を想定して、40時間分の割増残業代を固定残業手当として支払っているケースです。

たとえば4月には実残業時間は20時間でしたが、見込み残業代として40時間分の固定残業手当を支払っています。
したがって20時間分の残業代を多く支払っているのですが、これを翌月分の前払い分として5月に繰り越します。
5月も4月と同様に20時間の実残業時間でしたので、5月の見込み残業代40時間分が支払われるのですが、4月の繰り越し残業代20時間分がありますから、5月の40時間分の残業代はそのまま6月に繰り越されます。

6月は実残業時間が60時間になりました。6月分の40時間分の見込み残業代では20時間分不足しますが、5月分の繰り越し残業代が40時間分ありますから、それを充当することで、6月分の見込み残業代も20時間分、7月に繰り越されることになります。

8月は60時間の残業時間でしたが、7月からの繰り越し残業代20時間分と8月分の固定残業手当40時間分で充当することができます。9月は60時間の残業時間で、8月分からの繰り越しもありません。したがって、見込み残業代40時間分の固定残業手当では20時間分不足しますので、この分は上乗せして支払う必要があります。

ここで重要なのは、会社は固定残業手当として、毎月40時間分の残業代しか支払っていないということです。残業時間の多い少ないによって、残業代の額が変わるわけではありません。ただ、払いすぎた分を翌月に繰り越しているのです。そして、翌月は、まず繰り越された分から消化していきます。
 

繰り越しという考え方を導入していない場合、どうなるでしょう?

繰り越しという考え方を導入していない場合、どうなるでしょう? 繰り越しという考え方を導入していない場合、どうなるでしょう?
4月、5月は20時間余分に支払ったままです。いっぽう、6月、8月、9月は想定の40時間を超えた分の20時間分の残業代を請求されたら支払わなくてはなりません。

どちらにしても9月は20時間分の残業代を支払うことになるのですが、繰り越しという考え方を導入すると、6月分、8月分の40時間分の残業代を相殺でき、残業の少なかった4月分、5月分についても、結果として残業代を返還されたのと同じ効果を生むのです。つまり、会社としては合計80時間分の残業代の節約になります。

このような体制を適正に運用するためには、あらかじめ就業規則や賃金規程で諸条件を定めておくとともに、時間の管理はもちろんのこと、毎月の賃金額が変動することで1時間あたりの単価が変わり、結果未払いが残る可能性もあるため、時間に対応する賃金の管理も絶対不可欠です。

少し難易度が高い体制づくりですが、労働者にとっても、経営者にとってもメリットの高い給与システムだと思います。現在、こうした残業代の繰り越し清算を想定した労務管理のためのソフトを開発中です。
 
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